遠回りな未来
未来へ歩き出そう C
「うん、これならよくわかる」

…別に手でも十分だったと思うけどね。

って! 今気付いたけど、この体勢ってどっからどう見ても抱きしめられるようにしか見えないじゃないか!

もしかして、最初からこれが狙いだったりした!?

「あ、の…ちょっと…」

取りあえず抜け出そうとしても、腕力はかなわないし皐貴は訝しげな表情を返して来た。

「何?」

「…っと、その…」

皐貴はそういうつもりはないのかもしれないけど、こっちとしてはもう心臓がもたないよー!

僕が返答に困ってるのは目に見えてるはずなのに、皐貴は自分から切り出そうとはしなかった。

そしたら、皐貴がぷっと吹き出した。
唖然となる前に皐貴の気配が近付いて、唇に一瞬だけ温もりを感じる。

びっくりして目を白黒させていると、ようやく皐貴は離れてくれた。

「補給完了」

ニヤッと笑って皐貴は僕を解放した。
僕はしばらく思考停止してたけど、やっと皐貴の企みを理解して膨れっ面になった。

「し、信じられない…! 学校でっ…っ」

「学校でなきゃ、どこで会うんだよ」

う…それはそうだけど。
…いかんいかん! うまく騙されてんじゃん!

「ほら、そろそろ戻んねぇと佐々原が心配するだろ」

「………うん」

ホームルーム開始時間が迫ってる事も確かだった。
納得は行かなかったけど、僕は頷くしかなかった。

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あきゅろす。
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