遠回りな未来
未来へ歩き出そう B
だけど、皐貴は慧の事を全く気にしてないみたいだった。
ちょうど人が行き交う廊下の死角になるところに来て、僕の腕を離した。

「…もう、いいのか?」

皐貴がちょっと言いにくそうに聞くから、僕も余計に顔を上げづらくなった。

「うん…平気」

あー…またドキドキで胸が苦しい…。

もう、皐貴が朝から声をかけて来るからだぞ。

「そうか? まだ顔が赤いぞ」

「そ…っ」

顔が熱いから多分そうかなとは思ってたけど、改めて指摘されてますます熱くなった。

でも、熱いのは体調が悪いからじゃないし!
むしろ、その原因を作った皐貴を恨みたいよ、ホント…。
気付くどころか、本人は全く考えてないみたいだもんね。

「…つーか、余計に赤くなってねぇ?」

だ〜か〜ら〜、いちいち指摘しなくていいって!
僕の中では悪循環以外の何物でもないよ。

この能天気さ…何とかならないもんかね。

僕がひとりで考えてると、いきなりおでこに手のひらを当てられて固まってしまった。

「う〜ん、熱はないみたいだな…」

独り言のように呟きながら、皐貴は真剣に考え込んでいる。

何でこう…人の鼓動をかき乱す事をするかなぁ…。
僕ばっかりこんなにドキドキしてるなんて、ズルイじゃん。
顔が熱いのだって一向に治まんないし…。

「…これじゃ、わかんねぇな」

突然皐貴がボソリと言った。

何がわかんないのか考える間もなく、ぐいっと腕を引かれた。

「え…っ」

一人で混乱してると、皐貴はおでこを合わせて来た。

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あきゅろす。
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