遠回りな未来
自分の気持ち M
「やっぱ我慢は体によくないよな」
そう言って、初めて言葉を交わしたあの日のように皐貴はニカッと笑った。
「欲求不満になっちまう」
って、そういう事を爽やかに言うかー!?
それにっ、さっき自分が焦りすぎた事を謝ってなかったっけ…?
…全っ然、活かされてないじゃん!
「ひゃっ」
考え事をしてた時にいきなり服の裾から手が入って来たから、僕は変な声を上げてしまった。
「ムードねぇなぁ」
一瞬呆れたような顔をした皐貴はすぐに苦笑した。
「だって…」
恥ずかしいのとバカにされて理不尽に思う感情が入り交じって、僕はそれをごまかすために膨れるしかなかった。
そっぽを向いた僕を宥めるように髪を撫でていた皐貴は、ふと息をついた。
「ま、いいか。惚れた欲目だし」
「え…?」
僕に言うでもなく自分で噛みしめるような言葉に目を向けると、気付いた皐貴はまたあの真剣な眼差しをした。
あ…。
ドキドキで息が苦しい。
いつもの太陽みたいに笑う仕草と、ふとした時の真剣な眼差しとのギャップ…もしかしなくても、僕ってばそれにすっごい弱いかも…。
本人は無意識かもしれないけど。
でも、そんな裏表を計算する性格には見えない。
どっちかと言うと、全部さらけ出してどっしり構えるタイプかな。
だから…潔く見えるんだ。
しばらく至近距離で見つめ合ってたけど、均衡を破ったのは皐貴だった。
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