遠回りな未来
自分の気持ち K
「だけど…」
柚原先輩はすまなさそうな雰囲気を消して続けた。
「俺の気持ちは本気だっていうのだけは、憶えておいて欲しい」
「!」
強い意志のともった瞳に射抜かれた瞬間、僕の気持ちの霧も一陣の風が吹き抜けたかのように晴れた。
形にならない感情に戸惑ったけど、僕は答えを見出したかもしれない…。
まだ、自信はないけど。
それが嬉しくて、気付いたら柚原先輩の胸の中に飛び込んでいた。
「ど、どうしたんだ?」
さすがに柚原先輩もびっくりしたみたいだったけど、無理矢理突き放そうとはしなかった。
抱きしめられて安心する…、よく考えてみれば答えは決まってるじゃないか。
何だかめちゃくちゃ悩んだのが嘘みたい。
その迷路から外へ連れ出してくれたのも柚原先輩なんだけどね。
「僕ね…」
恥ずかしいから面と向かっては言わない。
今の精一杯の気持ち。
「ん?」
「自分の気持ち、わかったかもしれない」
「え…」
柚原先輩が半ば絶句して、病室内に沈黙が下りた。
こんなにも静かだとわかる。
呼び出しを告げる院内放送、流れているBGM、パタパタと走る人の足音。
それがわかんなかったんだ。
どれだけ僕の心に余裕がなかったかって事だよね。
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