遠回りな未来
自分の気持ち J
僕はどうなっちゃったんだろう…。
こんなに自分の感情が制御できないなんて初めてだった。
未知の感情が僕の心を捕らえ出しているような…。
ずっと突っぱねていた腕を掴まれたかと思うと、また広い胸に抱きしめられた。
触れる体温は、さらに涙を溢れさせる。
人の体温で安心できるなんて僕は知らなかった。
見ず知らずの人だったら、こんな気持ちになんかならない。
…それって、僕にとって柚原先輩がほかの人と『違う』って事…?
答えが欲しくて、思わず柚原先輩のブレザーを握りしめていた。
密着してたから、嫌でも柚原先輩が身じろぎしたのを感じてしまう。
そしたら、今度は柚原先輩が体を離した。
僕の涙もいつの間にかおさまっていて、頬が濡れるだけになっていた。
指を伸ばした柚原先輩がそっと頬を拭ってくれる。
「ごめん…俺が焦りすぎた」
脈絡のない言葉に、僕はどう反応したらいいのかわからなかった。
「おまえが…佐々原の気持ち知ってて悩んでるのを知りもしないでさ…」
「………」
違う…。
慧も柚原先輩も、ただ人を好きになっただけ。
おかしくなったのは、真幸先輩の事で人の気持ちが信じられない僕のせいなんだ。
柚原先輩が謝る事なんてないのに…。
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