遠回りな未来
自分の気持ち I
「…な、んで…」

僕が言い終わる前に、柚原先輩はすばやく傍にやって来て、腕を伸ばしたかと思うとぎゅっと抱きしめられた。

「このバッカ野郎! 心配させやがって…」

何かを堪えるように叫んで、柚原先輩は黙り込んでしまった。

でも、かすかに震えが伝わって来てびっくりするのと同時に胸がしめ付けられた。


でも…、

どうして柚原先輩がここにいるの?

知らせた憶えはない。
だって、体育の時間にいきなり倒れたんだもん。そんな間なんてなかった。


それに…こんな風に心配される権利もないのに…。


自分が突き付けた言葉の数々を反芻して辛くなった。

気付いたら、腕を突っ張って柚原先輩を押し戻していた。

向き合うのが怖くて顔は上げられなかった。

「…僕…酷い事言った、のに…」

助詞が足りなさすぎとか、言葉に出してから気付いたけど、言い直す言葉も出て来なかった。

呼吸が段々苦しくなって来る…そんな感覚。

「何が? おまえは全然悪くねぇよ」

「でも…」

柚原先輩がすごく気を遣ってくれてるのがわかる。
だから余計につらくて…。

その時、頭に大きな手のひらが乗せられた。
温かな手のひらに撫でられてる内に、何でわからないけど胸が一杯になった。

「…っ…」

その感情を抑えるより、不意に溢れた別の感情の方が圧倒的だった。

視界がにじんで頬が震えた。
シーツに涙がにじんで行くから絶対に泣いてるのはバレたはず。

なんだろ…この感情は…。

悲しくもないのに、どうして涙がこぼれるんだろう。

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