遠回りな未来
自分の気持ち E


コンコン。


静かにドアのノックする音が響いた。
姉ちゃんが立ち上がってカーテンの向こうに消える。

何か…ボソボソと話し声は聞こえていたけど、ドアまでは結構離れてるからよく聞き取れなかった。

「輝希〜、ちょっと売店行って来るね!」

「えっ、姉ちゃ…」

僕がびっくりしてる間に、ドアの閉まる音がした。
どうやら、僕の返事は聞かれていなかったみたい。

もう…いつも勝手なんだから。
傍若無人としか言いようがない。口に出したら絶対殴られるけど。

ってか、さっきは誰が来たんだろ…。
姉ちゃんの友達かな。
だとしたら、しばらくは戻って来ないよね。


まぁいいか。
静かに考え事をするにはちょうどいい。






カタン。






不意に物音がしてそちらに目を向けると、僕はさっきよりびっくりした。

「慧…」

どうして慧がここにいるのかとか疑問が山ほど湧いて来たけど、おどろきが強くて言葉にならなかった。

「ど…して…」

やっと出た僕の言葉に、慧は答えない。
ゆっくりとベッドに向かって歩いて来る。

俯いて慧の表情が見えなかったから、ますます不安になる。
だって、本来なら僕の方が慧に顔向けできないはずなんだから…。


大っ嫌い!!


あの日、僕に向けられた言葉が蘇って…逃げ出したくなるのを堪えるために、シーツをぎゅっと握りしめた。

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あきゅろす。
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