遠回りな未来
交錯 N
ガラッではなく桟に扉をぶつける、まさにガシャン!っていう音がした。
昼休みの喧騒が一瞬にして引き、教室内は静寂に包まれる。
みんながその音源に目を向け、もちろん僕も目を向けて顔が強ばった。
当然と言えば当然なのかもしれない。
そこには、見た事もないような怒りをたたえた柚原先輩が立っていた。
教室の静寂やそこにいるすべての人の視線なんか諸ともしないで、柚原先輩は大股で真っ直ぐこっちに向かって歩いて来る。
僕の傍に来るのと腕を伸ばして来るのは同時だった。
掴まれた腕が電撃でも食らったみたいにビリッと痛む。
「ちょっと来いよ」
…まるで、殴られそうな声音(こわね)。
柚原先輩は僕の返事なんて待ってないみたい。
もの凄い力で椅子から引き離されて、教室を連れ出される。
昼休みの廊下はたくさんの生徒たちが行き交っていたけど、みんな柚原先輩の怒りのオーラを感じ取って自然と避けて行く。
それと、好奇心の視線…。
でも、すぐに気にならなくなった。
僕が気にしていたのは、慧の事…。
絶対…バレた、よね…。
これだけ怒らせてるんだ。
赤の他人だって思う方がおかしい。
慧には何て言おう…。
僕たちが知り合いだったなんてついさっき知っただろうし、今は疑念が渦巻いてるはず。
こうなってしまっては、僕は僕の言葉でありのままを伝えるしかないんだけど。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!