遠回りな未来
交錯 P
「俺の気持ち知ってて、そんな事言ってんのか…」
返って来たのは、全く予想外な言葉だった。
僕はしばらくの間、呆気に取られてしまう。
「俺はなぁっ!」
柚原先輩が苛立ち気に壁を叩いたから、はっと我に返った。
「お前の事が好きなんだよ! わかってんだろ、そんな事ぐらいっ!」
それは…痛いほど真剣な想い…。
どれぐらい真剣だなんて、柚原先輩の瞳(め)を見ればわかる。
だけど、柚原先輩が真剣であればあるほど、こんな僕に向けられる想いが苦しい…。
何で僕なの?
柚原先輩を慕ってる人なんてそれこそ山ほどいるのに…何で僕なの?
そんな人たちに応えてあげればいいのに。
そうしたら、僕もこんなに苦しくならずにすんだ…。
次第に僕の中で、筋違いとも思える怒りが湧いて来た。
「こんな…人の気持ちもわからないヤツなんか嫌いになっちゃえばいいんだ。どんなに好きだって言っても、真幸先輩みたいに心変わりしちゃうんだから!」
って、ヤバ…。
怒りに任せて思わず固有名詞が出ちゃった。
でもまぁいいか、柚原先輩が知ってるとは限らないんだし。
「ちょ、ちょっと待て! 真幸って…沙田真幸、か?」
柚原先輩が怒りも吹き飛んだ感じで訊いて来る。
知ってた…。
柚原先輩とは中学が違うから、知ってるのならこの学校でって事になる。
じゃあ、やっぱり真幸先輩はこの学校にいるの?
僕は何もかも忘れてやり直したかったのに…神様本当には意地悪だ。
それとも、僕が嫌われてるだけなのか。
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