遠回りな未来
交錯 Q
「お前…あいつにフラれたのか…」
「………」
フラれた相手が柚原先輩の知ってる人で…それだけでも恥ずかしさで消えてしまいたくなる。
でも、僕には唇を噛んで俯くしか、それに抵抗する術がなかった。
「もう慧以外は誰も信じない…。僕の事はほっといてよっ」
「嫌だね」
いつの間にか柚原先輩が目の前にいて、反射的に逃げの体勢をとってしまった僕の背中が壁にぶつかる。
ひるんだ隙に腕を取られ、広い胸にぎゅっと抱きしめられる。
触れるほど怖くなって、必死で抜け出そうとした。
でも、後ろは壁だわ前は柚原先輩だわで、結局まともに動く事もできなかった。
「好きなヤツが目の前で泣きそうになってんのに、放置できるほど…俺は人間できちゃいねぇんだよ」
教室を連れ出した時の乱暴さとは違って、柚原先輩は静かに語りかける。
その言葉は、僕の中にゆっくり染み込んで行く…。
「そんなに必死になって何を守ろうとしてるんだ? あいつへの想いか? それとも慧ってやつへの友情か?」
真幸先輩の事はともかく、慧との事まで軽視された気がして頭に血が昇った。
「離して…離してよっ」
叫ぶように言うと、柚原先輩は渋々手を離してくれた。
押し退けるようにして胸の中から抜け出す。
ついて来た気持ちも振り払い、僕はドアに向かって歩み出した。
鍵を外してドアの取っ手に手をかける。
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