遠回りな未来
交錯 R
「こんなヤツなんか気にしてないで、もっと柚原先輩を想ってる人の事を見てあげてください…」

それはもちろん慧の事。
人気者の柚原先輩には、誰からも好かれる快活な慧の方が似合ってると思うから。

そこは…僕なんかじゃ踏み込めない明るい世界なんだ。

引き戸を引いてドアを開ける。
昼間の陽射しが飛び込んで来て、思わず目を細めた。
でも、すぐに慣れて教室に向かって歩き出した。










でも、僕の歩みは止まった。




そこには…。










驚愕に震える慧の姿があった。


喧嘩でもしそうな勢いで連れ出されたから、心配して様子を見に来たんだと思う。

だけど、それが仇になった。

「…嘘、柚原先輩が…」

慧の顔が泣きそうに歪んだから、僕は一番聞かれたくなかった部分を聞かれたんだと悟った。

つまり、柚原先輩が僕に『好き』って連呼した事…。

「慧、あれは…」

「言い訳なんか聞きたくないっ!」

僕の弱々しい言葉は、慧の怒声に一瞬でかき消される。

「し、信じられない…。僕の気持ち知ってて…コソコソ会ってたわけ!?」

卑怯だと思われてもしょうがない。
意図的ではなかったにしろ、慧には黙って会ってたんだから…。

何も反論できなくて、僕は黙っていた。
だけど、さっきみたいに下を向いたりはしなかった。
言葉にはならないけど、それが今一番できる誠意の表れだったから…。

そしたら、慧がさらに僕を睨み付けた。

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