遠回りな未来
交錯 K
わぁーっ!!
ひときわ大きな歓声が響く。
柚原先輩がロングシュートを決めたからだ。
もちろん、上にいる慧もさらに興奮している。
柚原先輩みたいでなくても、僕にももう少し運動神経があったらなぁ…。
そんな事を思いながら眺めていると、不意に柚原先輩と目が合ったような気がした。
え…っ!?
突然の事でドキッとなる。
そしたら、柚原先輩はこっちの方を向いて手を振った。
その何気ない仕草だけで、辺りは(男子には似つかわしくない表現だけど)黄色い歓声に包まれる。
みんな自分に手を振ってくれたと思っているからだ。
もちろん、慧も手を振り返しているのが揺れているからわかる。
でも違う…。
柚原先輩は怪訝そうにしてるから、多分唯一反応していない僕に向けたものなんだ…。
手を振り合うなんて、誰が見ても知り合いだ。
慧に知られてはいけない、たったひとつの隠し事。
それを守るためには、『赤の他人』を装うしかないんだ。
幸い、慧に乗りかかられて体の自由は利かない。
僕はそれに頼る事にした。
極力柚原先輩を視界に入れないように、気付いていないだけなのだと思われるように、僕はじっとグランドの石ころだけを見つめていた。
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