遠回りな未来
交錯 J
「ただいまー」
教室の扉が開いて慧が入って来る。
ちょっと疲れた顔してる…?
「何だったの?」
「うん…クラス資料の整理。頼まれちゃってさ」
頼りない僕と違って、慧は何かと頼られる事が多い。
先生、友達関係なく。
やっぱりこういう事は、普段の行いが物を言う。
他人が、自分をどう見ているか…。
「で? 輝希は窓際で何を黄昏れてんの?」
くすくすと笑いながら訊いて来るから、思わず意地を張ってしまう。
無言の抵抗でグランドに視線を戻す。
そしたら、慧はあからさまにため息をついて傍にやって来た。
「…あっ! 柚原先輩っ」
「わっ」
窓際に寄った慧は、その視線の先に柚原先輩を見つけたらしく、瞬時にモード(?)を切り替え僕の頭を腕置き場にして身を乗り出した。
ったく〜! 柚原先輩絡みになるとキャラが変わるんだからっ!
大興奮してる慧は僕を支えにしてるなんて気にもしないで、届いていないかもしれない声援を送っている。
仕方ないから、僕は慧に乗りかかられた体勢のままグランドを眺めていた。
柚原先輩たちは休み時間を利用してサッカーをしていた。
やっぱり身のこなしといい、立ち振る舞い…ううん、存在自体がほかの人と違う。
グランドにたくさん人はいるけど、こうして見ると不思議と惹き付けられる。
グランド側教室の窓からは、たくさんの生徒が歓声をあげている…多分、柚原先輩に対してなんだろう。
僕の上にいる慧も、負けじと声を張り上げている。
もう…元気としか言いようがない。
そのテンションは聞き流すだけで精一杯だった。
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