遠回りな未来
交錯 I
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あれは、本当に真幸先輩だったのかな…。
あの時見かけたのも視界に掠めた一瞬だったし、見間違いって事もあり得るけど…あの人の雰囲気はそう簡単に隠せるものじゃない。
中学の頃だって、ひたすら追い続けてたんだ。
だけど…また会えるかもしれないっていう気持ちは、会ってしまう事への不安にすぐ覆い尽くされる。
一体、僕はどうしたいんだろう…。
いつまでも済んだ事を悩んでもしょうがないってわかってる。
なのに…どうして自分の心が思い通りにならないのかな。
前向きになろうって決めたとこなのに、真幸先輩に似た雰囲気に触れただけで決意は乱れてしまう。
やっぱり僕はまだ…。
会わなくなって約半年、気持ちの整理はついたと思ってたけど…全然ダメじゃないか。
「はぁ…」
自分の情けなさにため息しか出ない。
それぞれがお昼ご飯を食べ終わって少しした頃、慧は担任の先生に呼ばれてまだ帰って来ない。
さっきあんな事があったばかりだから、一人になるとどうしても考えなくてもいい事に思考が費やされる。
僕は教室で窓際に椅子を寄せ、頬杖をついてぼんやりとグランドを見つめていた。
昼休みだから、野球をしてる人やサッカーをしてる人たちが楽しそうにグランドを駆け回っている。
その中にはクラスメートたちの姿も見える。
さっき誘われたけど、とてもそんな気分になれなかったから今日は断った。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!