遠回りな未来
交錯 G
後ろで慧が驚いて呼ぶ声が聞こえた。
そんな、だって…いるはずがない…。
近辺にあるのはこの高校だけじゃない。それこそ同レベルの高校なんて一杯ある。
どうか人違いであって欲しい。
今になって出会ってしまったら、僕の気持ちは崩れてしまう。
慧やクラスメートたちの助けで、ようやく真幸先輩がいなくても立っていられるようになったんだ。
確かめない方がいいと心は警告するのに、体が止まらなかった。
あの角を曲がれば…。
「わ…っ!」
必死だった僕は相当勢いがついていたらしい。
曲がり角を曲がった瞬間、進行方向に歩いて来ていた人が視界に入ったけど、走ってる勢いがすぐに止まるはずがない。
僕はその人にぶつかり、情けない事に弾き飛ばされるような形で廊下に尻もちをついた。
いった〜、人にぶつかって転ぶなんて最悪!
って、ぶつかった人は!?
「お、おい…大丈夫か?」
「ごめ…っ…なさい!…あ」
謝ろうと顔を上げて、僕は唖然となった。
そこに立っていたのは柚原先輩で、びっくりしたような呆気に取られたような顔で僕を見下ろしていた。
何が悔しいって、あれだけの勢いでぶつかったのに柚原先輩はよろめいた様子もないからだ。
びっくりし過ぎて立ち上がるのも忘れていた僕を腕を掴んで立たせて、柚原先輩は辺りに散らばった教科書やノートを拾い出した。
その様子に我に返って僕も拾うのを手伝う。
全部僕のだから尚更だ。
「今日は、随分と元気なんだな」
「ご、ごめんなさい…。ありがとうございます…」
申し訳ないのと恥ずかしいのとで、僕は項垂れるしかできなかった。
「謝るのかお礼なのか、どっちかにしろって」
ため息をついた柚原先輩だけど、最後の方はおかしそうに笑っていた。
照れ隠しもあって、僕はふくれっ面になった。
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