遠回りな未来
交錯 E
「僕が知ったのは委員会で先輩たちに聞いてからかな」

混乱してる僕をよそに慧は話し始める。


僕はクラスでの係にあたってるから、委員会はやってない。
委員会だと2年も3年もいるから、その場で慧が聞いた…というか質問責めにあったらしい。

「きっかけは入学式だって。ほら、輝希の名前って…正直読めないじゃない?」

そう、僕の名前は初対面の人にはもれなくちゃんと読んでもらった事がない。
それでみんなが興味を持って声をかけて来て友達になったのがほとんどだけど…。

「名前を知ったら、どんな子なのかって知りたくなるのは当然! そうしてる内に…じゃないの?」


何で?


悪いけど、僕がどんな人間なのかって…そんなの底が知れてる。
その上で僕に好かれる要素があるとは思えないんだけど。

「僕…そんな好かれる人間じゃ…」

続けようとした言葉は、慧が唇に当てて来た人差し指で封じられた。

「自分を卑下するのは良くないよ。輝希がどんな人間かなんてココでは僕が一番知ってるんだから」

そう言って慧は誇らしげに笑った。


「それを知って、傍にいる…その意味ぐらいは察して欲しいな」


いくら鈍い僕にだって、今の慧の言葉がどれだけ大きな意味を持つのか理解できた。

情けないけど、抑えきれない衝動で目頭が熱くなった。

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