遠回りな未来
告白 H
「そんな顔するなって。可愛い顔が台無しだぜ」
「かっ、可愛い!?」
男に向かって普通『可愛い』とか言うか?
唖然としてるのがわかったのか、柚原先輩はこっちに歩きながら追い討ちをかけて来た。
「当野輝希=可愛い っていう方程式が、あの学校ではできあがってるのさ」
「誰が決めたの!? そんな事」
くってかかると、さすがの柚原先輩も体をひいた。
「俺は知らねぇよ。ほかのヤツが決めたんだろうよ」
そう言って、柚原先輩は海に目を向けた。
その何でもない仕草がカッコ良くて、僕は思わず見惚れてしまう。
僕は、きっとこんな風に…真幸先輩みたいになりたかったんだ…。
「でもさぁ、良い名前だよな。『輝』く『希』望なんてさ。そんなヤツが…暗い顔なんて似合わねぇぞ」
噛みしめるように言った柚原先輩は、視線を戻して人差し指を伸ばして来たかと思うと、つんっと額を弾いた。
「いたっ」
「何ヘコんでんだよ。せっかく海に来てんだぜ?」
「うん…」
ああ、駄目だ。真幸先輩の事ばっかり考えてたら。
もう僕はフラれたんだ。
真幸先輩だって、僕の事はさっぱり忘れて好きになった人とうまくやってるはず。
あの人はどんなに難しい事でも涼しい顔でやってのけるんだ。
ほかの誰と付き合うのだって、きっと問題ないはず。
そう、僕と付き合った事を除いては…。
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