遠回りな未来
告白 E
僕がしっかり掴まったのを確認すると、バイクはゆるやかに走り出した。

不思議なのは、結構早い速度の中で支える物は柚原先輩の体しかない…そんな不安定な状況で、あんまり恐怖は感じなかった事だ。

でも、思ってたより顔に当たる風が強かったから目を瞑ったままになっていた。

そうしながら、どれだけ走っただろう。
僕にしてみれば、長かったのか短かったのかわからないけど…。


「見てみろよ!」

不意に声をかけられて、僕は恐る恐る薄目を開けた。

「わぁ…!!」

一瞬、速度の事とか顔に吹き付ける風の事なんかも忘れてしまった。

目の前に広がるのは、一面の真っ青な海…!
雲ひとつないこの空と今にも繋がりそうな、そんな綺麗な青だった。

柚原先輩は砂浜に降りる階段のすぐそばにバイクを停めた。
降りようとするその姿にならって僕も降りて地に足をつけたけど、膝に力が入らずにその場にヨロヨロと座り込んでしまった。

「お、おい…大丈夫か?」

慌ててエンジンキーを抜いた柚原先輩が駆け寄って来て、僕の肩を掴んで傍の縁に座らせてくれた。

「酔ったのか?」

真剣だとは思うんだけど…怖い顔で訊かれて、僕はふるふると首を振った。

「ちょっと…びっくりしだけ…」

気持ちを落ち着かせようと何度か深呼吸をして、僕はゆっくりとアスファルトに降り立った。
今度はへたり込まなかったから一安心した。

「飛ばし過ぎたか? 悪かったよ」

そう言って柚原先輩はぐりぐりと頭を撫でた。
でも、これは謝ってるというより、文句を押さえつけている感じだ。

先に降りた柚原先輩に続いて階段を降りて行く。
砂浜に片足を踏み出して、もう片方…っていう時に不安定な足元だからよろけてしまう。

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