遠回りな未来
告白 D
翌日、朝になって起きてもまだ実感が沸かなかった。

だって、慧の言うところの有名人が僕なんかに声をかけて来るなんて夢じゃないかって。

その上、海にまで誘われちゃった訳なんだけど…。

先輩だから待たせちゃいけないっていう気持ちから、僕はかなり早い時間から用意をすませて待っていた。

何か、これじゃ遠足前の幼稚園児じゃないか。

別に楽しみでしょうがないって訳じゃないんだけどさ。


約束の時間を少し過ぎた頃に柚原先輩はやって来た。



…しかも単車で!

てっきり徒歩とかで来るかと思ってたからさ。

インターホンが鳴って、出迎えに外に出た僕は数秒間呆けてしまった。

「…どうしたんだ?」

柚原先輩の第一声に、僕は我に返った。

「あ…いえ、何でも」

「早く乗れよ。海までは少しあるからさ」

そう言って、柚原先輩は僕にヘルメットを差し出した。
それを受け取ると、僕はぎこちなくかぶって留め金をつけて後部座席に跨った。

手のやり場に困っていると、いきなり腕を掴まれた。

「ほら、落ちると危ないからこっち持ってな」

言いながら、柚原先輩は僕の腕を自分の腰に回させた。
服を着てるとわからない筋肉質な体型に一瞬びっくりして腕を引いちゃったけど、落ちてケガするのは嫌だったからしっかりつかまった。

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