遠回りな未来
告白 B
でも、柚原先輩がそう言ってくれた事で、僕も少しは救われた。
それからは別にかける言葉もなく、沈黙が流れた。
その沈黙に、僕は段々と居心地が悪くなって来た。
「…じゃあ、僕はこれで。友達が待ってるんで…」
ほんとは僕が待ってる立場だったけど、この場から離れるためには嘘でも構わなかった。
「あ、ちょっと」
これで柚原先輩も部活に行くかと思ったんだけど、何故か僕は二の腕を掴まれて、歩き出そうとするのを引き止められてしまう。
「今度の日曜、時間ある?」
と、柚原先輩はこんな事を訊いて来た。
「はぁ…まぁ…予定はないですけど」
「じゃあさ! 海でも行かねぇ?」
「へっ?」
僕には誘われる理由が思い当たらなかったんだけど、柚原先輩は僕を見据えて動こうとしなかった。
憧れてる人にこんな風に見つめられたら気絶しそう、とか僕は呑気に考えていた。
だけど、掴まれてる僕の腕が折られるような錯覚に陥ってちょっと怖くなった。
「い、いいですけど…別に」
「マジで!? じゃあ、日曜に家まで迎えに行くから!」
僕の答えに、柚原先輩はまたニカッと笑って駆け出した。
「え、あ…ちょ…っ」
僕の引き留めなんか全然間に合わないぐらい、柚原先輩は風のようにサッカー部のスペースへ走って行ってしまった。
つーか、柚原先輩って僕の家知ってんの?
…でも、迎えに行くって言ってたよね。
僕は家で待ってたらいいんだよね、きっと。
それにしても、柚原先輩って結構子供っぽいとこあるんだなぁ。
あんな風に笑ったりするのって…少なくとも、慧に連れられて見かけた時には全然思わなかった。
ほんとはもっと面白い人なのかもしれない。
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