Eggキット * にっこりと、人形のように笑う二人に、村人達の背筋に寒気が立ち上った。 魔女と名乗った、黒い服の姉。 使い魔と名乗った、白い服の妹。 二人が人外の存在であると、今初めて思い知った。 超上的で、超絶的で、狂人的で、それゆえに、神秘的であった。 魔女は言った。 それで、ご用件は? 村人は、唾を呑み込んで聞いた。 村外れの、歪みは、……貴女がやったのか? しばし、沈黙が降りた。 村人は皆、まるで怪物を目の前にしたかのように、硬直していた。 魔女は、一度目を閉じ、しばらくして僅かに目を開いて、村人達を見た。 ……ええ、私がやりました。 よく通る声で、凛と言う彼女の傍らで、使い魔が目を伏せていた。 な……なんと。 一番の年寄りが、驚愕に目を見開いた。 その途端、まるで堰を切ったかのように、村人達は一斉に魔女を非難した。 老若男女関係なく、ありとあらゆる言葉で責め立てた。 お前がやったのか。 お前が皆を誘拐したのか。 返せ、返せ、返せ、返せ 勢い余ってか、憎悪と悲哀からか、男が一人飛び出した。 そしてそのまま、魔女に殴りかかろうとした。 怒りの籠もった拳が、魔女の小さな頭めがけて振り下ろされる。 誰もが息を呑んだ。 最悪の事態を想像して。 しかし、男の拳は殴りかかる直前に止まった。 妹が、姉を庇うように立っていた。 話を聞いて、まだ途中なの。 そう言って、魔女の隣に下がった。 村人達は、勢いを削がれ、ただ茫然と二人を見た。 魔女の口が、ゆっくり動く。 確かに、あの歪みを創ったのは私よ。 でも、私はそれだけしかしていない。 私は、連れ去られた彼らの、帰り道を創っただけ。 信じて。彼女は縋るように言った。 私は、村人達を連れ去っていないの。 [*前へ][次へ#] [戻る] |