[携帯モード] [URL送信]

Eggキット

人々は駆け上がる。

初めて見た王宮の豪華絢爛な装飾品に、感動するどころか見向きもせずに。

王の間に、護衛に護られた、一人の男がいた。

無礼者め!何者だ。

護衛の一人が声を張る。

あなた方に誘拐された者だ。

王、貴方なんですね?
私達を村から攫い、あの部屋に閉じ込めさせたのは。

問い詰める村人達に対し、気の弱そうな王は悲鳴をあげるばかり。

話など、できる状態ではない。

いったいどうして?

なんのために?

どうやって?

彼等の聞きたいことに、ただ脅えをみせるだけ。

やがて、怒ったかのように話しだした。

まるで、緊張の糸が切れたかのように。

そうさ、私がやったのだ。
特殊な魔術をかけ、座標を固定し、ある一定の時間に固定した場所を訪れた者を、空間の歪みから移動させた。

なんのために!?

知れたこと。

王は笑う。

神への生け贄だ。今年はお前達の村からだったのだ。

まさか、毎年やっていたの?

誰かが、悲痛な叫びを上げた。

なんてことを。

必要なことだったのだ。

王の返答に、村人達は怒り狂った。

そして、彼等は王を倒し、国中に王の所業を公開した。










…そしてその後、村人達は新たな王を選び、平和な国造りのために、大いに役にたったそうじゃ」

老婆は話し終わると、ふうと息をついた。

「さぁ、もうお帰り、子供達。
母さんが家で待ってるよ」

促すと、おとなしく話を聞いていた子供達が慌ただしく帰りだした。

小さな小屋に一杯に入っていた、小さな聞き手が疎らに帰っていくのを見送り、老婆は誰も居なくなった家で、にっこりと笑った。

「子供はかわいいね。お姉ちゃん」

すると、どこからともなく魔女の少女が現れた。

「そうね。あなたの話し方も様になっていたわよ?
私のかわいい使い魔」

からかうように笑って、老婆の肩に触れる。

一瞬で、老婆から少女へ変貌した。

「からかわないで、これでも頑張ったんだから」

「最後は話を変えたでしょう?
優しい子ね」

「子供に聞かせられる話じゃなかったからね。
王様が自白する辺りから、変えちゃった」

「ふふ、そうね。
あんな醜く下劣で哀れな話、聞かされたらたまったものじゃぁないわね」


そして、二人は顔を見合わせて、くすくすと笑った。










歴史にも記されなかった、真実。

知るのは、当人達と、傍観者であった双子の姉妹のみ。


[*前へ]

11/11ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!