イリーガル・ロット プロローグ 指定暴力団・浜田組の幹部、島尾大希(しまお だいき)は、悪夢を見せられていた。 仕事柄、他の者へ悪夢を見せることはある。 しかし今は、自分達が相手にやっているのではない。 ーーつまり、やられているのだ。 そうこう考えているうちに、事務所にいた部下達は容赦無く射殺されていく。 彼らの死体の中には、頭や腕が無くなっているものもあった。 「ーー!」 次の瞬間、島尾の真横にいた警護の組員の頭が爆(は)ぜる。 これで、この事務所に残っている組員は、島尾一人になった。 そして相手ーーおそらく20代であろう青年ーーは、両手でFN社のSCARカービンライフルを構えている。 「チッ…!」 島尾は、ベルトに差していたトカレフ拳銃を右手で抜こうとした。 しかし、青年がSCARを発砲。 島尾の右上腕から右肩あたりの肉が持っていかれて、たまらずトカレフを取り落とす。 少し骨が露出したりもしている。今にもちぎれそうな右腕を見て、狂ったような悲鳴をあげる島尾。 それでも青年はおかまい無く、島尾の眉間に銃口を向ける。 そして、引き金を絞った。 ーー本当に、悪夢だ。 死ぬ間際、島尾は思った。 それを察したのか、撃ち終えた後、島尾の死体を見下ろしながら、青年は言った。 「こっちこそ、悪夢だよ」 [戻る] |