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29-3
生徒会室に入るなり、パソコンの前にいるニーナが本をバンッと閉じた。
驚きの表情と動揺してる様子に、その本には触れないほうがいいと判断した。


「パーティー始まってるよ?」

ニーナは無言で床へと視線を落とす。
分かりきっているのか、眉を寄せて難しい顔をした。

ニーナは今までスザクに話しかけることができていた。
ユフィのことをスザクに聞いていたぐらいだし。
パーティーに行かないのは別の理由があるんだろう。
祝えない理由が。

「ニーナは嫌?
ユフィ…ユーフェミア様に騎士がつくのは」
「私は…」

独り言のような小さな呟き。
聞いただけで、苦しんでるんだって分かるような声だった。

「………私は、どうすればいいか分からない…」

ニーナ自身、言葉で表現できないんだろう。

「ひとまずこれ食べて一息入れなよ。
せっかく作ったんだから」

持ってきたプリンをテーブルに置く。
ニーナはプリンを見て、あたしを一瞥し、またプリンに視線を向ける。

「…ありがとう」
「こんにちはぁ」

底抜けに明るい声が。
覚えのある声が、外に続く窓から聞こえた。

生徒会の窓は人が外へ余裕に出入りできるほどの大きさだ。
声の主が、遠慮なく窓をくぐって生徒会室に進入する。

「ロ……ッ?!」

危うく名前を口にするところだった。

「ここからいい匂いがするんだけどォ」

緩みきった笑顔のロイドは、テーブルの上のプリンを見つけるなり目の色を変えた。

「やっぱりここだった!
これはボクのために用意たものかい?」
「あ、あの。
あなたは…?」

手をワキワキさせてプリンに迫るロイドに、ニーナは困った眼差しをあたしに向けた。
どうしよう、と言いたげな助けを求める瞳。

「余分あるから大丈夫だよ」
「ヤッター!!」

あんたに言ってない。

手をバッと広げ、ロイドはプリンに飛び付いた。
ロイドこんなだっけ?
あたしはコードギアスでのロイド像が音を立てて崩れていくのを感じた。

プリンをぺろりと平らげ、ロイドは満足げに息を吐く。

「ごちそうさまでした♪
あぁ美味しかった!
できればもうひとつ食べたいんだけど…」
「…………あたしので良かったらありますよ」

ロイドの輝く眼差しが、食べたい!!と叫んでいた。

「後で渡しますから。
それより、スザクに用があるんですよね?」
「空、知ってる人?」
「スザク、前に言ってたの。
上司の人がプリン好きだって。
あなたですよね?」
「ンフっ、ご名答。
枢木スザク少佐を探しに来たんだけど、キミにも会えて良かったよ。
ボクはロイド・アスプルンド」
「空です」
「そっちの子は?」
「ニーナ・アインシュタイン……です」

テーブルに皿を戻したロイドは、パソコンに視線を移して瞳を細めた。

「ん〜?」

ニーナのそばに行き、パソコンを覗く。

「ん〜♪
面白そうなことやってるねぇ」

あたしもパソコンを見る。
図形やグラフが忙しなく動いていて、見ただけではさっぱり分からない。
これ、面白いの?
ロイドの言葉に耳を疑った。

「分かるんですか?」
「ウランでしょ?
質量数235のほう」
「はい!
そうなんです!」

ニーナの表情がパッと輝いた。
パソコンに向き、キーボードを操作する。
ニーナは専門用語を織り混ぜてそれが何かを熱く語るが、あたしには外国人に外国語で話しかけられたような感覚に陥った。
ヤバイ、さっぱり分からない。
けど、初めて見るニーナの生き生きした表情はすごく可愛くて。

パソコンを眺めるロイドが無言で眼鏡を外した。
え? 見えなくない?
興味を持ったら眼鏡を外すクセでもあるのだろうか?

「━━━━装置を用意してやってもこのままじゃ実験できなくて。
だから、」

熱く語っていたニーナはやっと我に返った。

「ごめんなさい私ったら」

恥ずかしいのか、ニーナは顔を赤くしてあたしを見た。

「すごい好きなんだね」

内気な姿しか知らないため、ニーナが見せた表情に嬉しくなる。
眼鏡を戻したロイドは宝物を見つけたようにきらきらした笑みを浮かべた。

「実験できるディスク貸そうか?」
「本当ですか?!」
「うん。
大学の時に使ってたヤツで新しくはないけど」
「いいえ! 実験できるなら。
ありがとうございます!!」

まぶしく思えるぐらい、ニーナの笑顔は輝いていた。

「今すぐじゃないけどね。
今仕事が入ってて」
「仕事?」

なら、スザクを呼びに来たのも納得できる。
あたしとニーナは、スザクのいるダンスホールにロイドを案内することにした。
その途中、プリンをロイドに渡すためキッチンに立ち寄った。
あたしとニーナが見守る中、ロイドはあっという間にプリンを完食する。
早すぎて、プリンって飲み物だっけ?と内心疑問に思った。







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あきゅろす。
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