28-1
全てを伝えた後、いつの間にか眠ってしまったのか、ふと目覚めれば朝になっていた。
寝起きのぼんやりした頭は、誰かがすぐそばで眠っていることに気づいて鮮明さを取り戻す。
ルルーシュだと思って確認すれば、やっぱりそばで眠っているのはルルーシュだった。
前にも一緒に寝たことがあるので空は動揺しない。
起こさないように、静かにゆっくりベッドを出ようとする。
が、ルルーシュに腕を捕まれ引き戻されてしまった。
抱きしめられる形で彼の腕の中に。
「ルルーシュ……起きてたの?」
確信を持った空の問い掛けに、ルルーシュはギュッと抱きしめて答えた。
「おはよう」
微笑みを帯びた爽やかなあいさつは、とても寝起きのものとは思えなかった。
寝たフリしてたんだな、と空は内心呆れ気味に呟いた。
腕の中にいるせいか、ルルーシュの体温が伝わってくる。
恥ずかしくなったが、嬉しさもあったため抜け出せなかった。
顔を合わせていないのがせめてもの幸いだろう。
空は自分の中の照れを隠すため、無理やり話題を持ち出した。
「あ…あの、昨日はありがとうルルーシュ。
話、全部聞いてくれて」
「ああ」
思い出しているのか、ルルーシュは沈黙を挟む。
「やっと腑に落ちた。
おまえがここに―――俺のところに来た理由が」
「…うん。
あたしは、ルルーシュをを助けるためにここに来た」
「母さんに頼まれて、だったな」
「今は違うけどね」
頼まれたとしても、今は自分の意思だ。
「ルルーシュを好きで、大切だと思ってる。
マリアンヌさんに頼まれたからじゃない。
あたしがルルーシュを助けたいの」
「それは確かに違うな」
声だけしか聞こえない。
でも、声だけでルルーシュが嬉しそうに微笑んでいるんだと空には分かった。
幸せだと思える暖かな時間は、朝起きるためにセットしていたアラームの音が壊した。
空はアラームを止めるためにルルーシュの腕を抜け出す。
魔法が解けたような寂しさが胸を占めた。
「……おはよう、ルルーシュ」
「……ああ。
おはよう」
寂しさを抱いたのは空だけではない。
ベッドから身体を起こしたルルーシュの声も沈んでいる。
顔を洗うために部屋を出ようとした空が、ふと足を止めてルルーシュを見る。
「ねぇルルーシュ。
これから先……どうするの?」
不安な表情の空に、ルルーシュは“これから”が何に対しての問いかすぐに察した。
「まさか今も思っていないだろう?
俺とスザクの関係が壊れると」
「思ってないよ、壊れるなんて。
ルルーシュならきっと壊さない」
「………ああ。
だが、俺が白カブトを邪魔だと感じていることに変わりはない。
脅威だと思う存在を消さない限り、俺の作戦はことごとく潰される。
おまえが俺ならどうする?」
挑むような質問者の瞳でルルーシュは問い掛けてくる。
空は沈黙し、考えた。
もし自分がルルーシュなら。
わずかな間を空け、彼女は答えた。
「白カブトを脅威だと思えない存在にする……かな。
あたしなら、スザクと敵対するんじゃなくて共に戦いたい」
ルルーシュはその答えに満足し、微笑んだ。
「ああ。
俺は白カブトを仲間に引き入れるつもりだ」
それが何を意味するか。
ルルーシュではなくゼロとして。
ここではなく騎士団へ。
「早く帰ってきてね。じゃないと出席日数足りなくなるよ。
学園祭の準備だってあるんだから。
みんなが心配しないように」
「スザクにも前に似たようなことを言われた」
ルルーシュは苦笑し、肩をすくめた。
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