28-5 ドレスや衣服がずらりと並ぶ衣装部屋の奥に、着替えるための仕切り台が置いてある。 空は今、そこに隠れてユーフェミアが用意したドレスに着替えていた。 お姫様が着るドレスそのもののため、細心の注意を払いながら袖を通す。 緊張が続いているため、着替えのスピードは遅かった。 「どう? ピッタリだと思うけど……少しでもキツかったら言ってね?」 「ありがとう。 多分大丈夫だよ」 着替えながら、空はユーフェミアに聞かなければならないことを思い出した。 「ねぇユフィ、聞きたいことがあるんだけど」 「なぁに?」 なぜか聞くことに躊躇いがあって、空は次の言葉がすぐ出なかった。 それでもユーフェミアは次を急かさず黙って待っていた。 心が決まり、空はやっと口を開く。 「ユフィはどうしてスザクを騎士に決めたの?」 『その人をその人として見ない体制は間違っている』 それがユフィの言葉だ。 だから、スザクを好きだという理由だけで騎士にしたとは思えない。 空はただ知りたかった。 「スザクを騎士に決めたのは………悔しかったから、かな」 独り言のように、ユーフェミアは静かに呟いた。 「昨日、チョウフ基地を黒の騎士団が襲撃をかけたの。 スザクはそこで戦っていた。 敵ナイトメアが7機もいる状況で、たった一人で…。 たくさんのブリタニアの人がスザクを応援していたわ。 ……ううん、今思えば、みんなが応援していたのはスザクじゃなくてランスロットのパイロットだったのかも。 みんな、スザクが戦っていたのを知るなり、今までの応援を無かったことにしたわ。 スザクをスザクとして見てもらえないのがすごく悔しくて…」 ユーフェミアは辛そうな顔で打ち明けてくれた。 それが理由でスザクを騎士に決めたのだろう。 少しでもスザクを認めてもらうために。 スザクをスザクとして見てもらうために。 「ユフィ、話してくれてありがとう。 ユフィらしい理由だね」 胸の奥のモヤモヤが消えて、空はすっきり笑えるようになった。 中断していた着替えを終え、ユーフェミアの前に姿を出す。 「どうかな…?」 ユーフェミアが選んだドレスは鎖骨があらわになっていて、空は恥ずかしさで胸元を腕で隠していた。 空のドレス姿を見るなりユーフェミアは満面の笑顔を咲かせる。 「あら! やっぱりそのドレスを選んでよかったわ!! すっごくかわいい!!」 ユーフェミアのはしゃぎっぷりはまるで子供みたいだ。 かわいいの言葉に空はホッとする。 自分自身もかわいいと思うし、肌触りは最高に良いし、サイズもピッタリだ。 だけど露出の点では恥ずかしさが断トツで勝ってしまう。 迷った空は、パッと目に飛び込んだショールを肩にかけることにした。 これで隠せば恥ずかしさは消えるだろう。 空は自分自身に大丈夫だと言い聞かせた。 「スザクが待ってるわ。 ソラ、早く見せに行きましょう」 ユーフェミアがワクワクした表情で部屋を出た。 追いかけようとした空は、大切なものを忘れていることに気づいて仕切り台へと戻る。 ルルーシュのペンダントを首にかけてから、少し遅れて部屋を出た。 [Back] [*前へ][次へ#] |