3-8
出入り口でボンヤリと夕日を眺めていたスザクは、外に出たあたしに気づいて振り返った。
「ありがとう、来てくれて。
急にごめん。
ルルーシュから話、聞いた?」
頷くあたしに、スザクは返事を待つように唇を結ぶ。
あたしの答えはもう決まっていた。
「ごめんね。
軍には……スザクの上司さんのところには行けないんだ」
スザクが見せたのは、落胆ではなく『やっぱり』と言いたげな微笑みだった。
「いいんだ。
もともとダメ元のつもりだったから。
無理言ってごめん」
「ううん、あたしもごめん。
せっかくお礼がしたいって言ってるのに…」
それ以上会話は続かなくて、降りた沈黙がとても気まずい。
スザクはぷっと小さく吹き出した。
「なんか謝ってばかりだね、僕ら」
「そだね」
お互い笑いあう。
そのおかげで、先ほどの気まずさはもう消えていた。
「そうだ。
空にはまだ言ってなかったけど、生徒会に入ることになったんだ」
「生徒会に?」
「そう。
ルルーシュがキッカケをくれたんだ。
だから頑張ろうと思う。
もしかしたら君のおまじないが効いたのかも」
思い出してギクリとなった。
スザクを見られなくて、あたしは視線を地面に落とす。
「できればこの先黙っててほしいな…。
あれ、あたし自身もよく分からなくて」
恥ずかしさでモゴモゴとしか喋れない。
それがスザクの笑いのツボを突いたのか、彼は楽しそうに大きく笑った。
恥ずかしさがもっと急上昇する。
だけど、スザクの笑い声を聞く内にどうでも良くなった。
笑顔が見れてあたしも嬉しくなったからだ。
笑いが収まり、スザクは思い出したように空を見る。
あたしも釣られてそれに続く。
夕日はもう沈み、夜の色が顔を出し始めていた。
「もう帰らないと…」
「…………そっか、もう暗いもんね。
あ、そうだ!
ルルーシュ呼んでこようか?」
「そうだね。
じゃあ、お願いしようかな」
ひとつ頷いてあたしはダッシュで駆け出した。
ものの十数秒でルルーシュの部屋に到着したあたしは、扉のタッチパネルを押してから、室内にひょいっと顔を覗かせる。
「ルルーシュ、いる?」
途端、張り詰めたように感じた空気の違和感。
まるで聞かれたくない話でもしてたように、ルルーシュもC.C.もあたしを凝視していた。
「…………どしたの?」
「いや、なにも」
C.C.は首を振って涼しげに答えた。
「ルルーシュはここにいるが、何かあったか?」
言われてやっと元の用事を思い出した。
「ルルーシュ、スザクもう帰るって。
挨拶しに行きなよ」
「あ、ああ…………行ってくる」
ルルーシュはすごい動揺してるのか、まばたきが結構多い。
あたしはあえて気づかないフリでルルーシュを見送った。
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