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3-5
スザクたちが出ていった窓から身を乗り出せば、屋根によじ登ったままの姿勢で二人は

「猫は俺が」「いいや僕が」

そんな言い争いをしていてどちらも譲らない。
ここに猫がいることにも気づかずに。
ルルーシュは見事にスザクを足止めしていた。

「ルルーシュ!
猫、捕獲したわよっ」
「本当か?!」

仮面の有無を一刻も早く確認したいのか、ルルーシュは屋根という自分の足場を忘れてあたしへと向き直った。
その勢いで足をすべらせたが、スザクがすぐに腕を掴んだおかげで大事には至らない。

「安心しすぎだよ」

返す言葉が無いのか、引き上げられたルルーシュは苦笑するだけだった。

スザクが猫へと視線を移す。
確認するようジッと見つめたかと思えば、すぐにニコリと笑った。

「やっぱりこの前の猫だった。
ありがとう空。
猫を捕まえてくれて」

撫でようと手を伸ばすものの、牙を向いて威嚇された。
とことんスザクの片思いだ。

「もらうぞ。
俺は先に降りている」
「あ、うん」

それが何を意味するか。
『残ってゼロの仮面を回収しろ』だろう。
あたしは猫をルルーシュに渡しながら『もちろん』と笑顔で頷いた。
猫がルルーシュの手に移るなり、彼は背を向けてもうあたしを見ようとしない。
それが少し寂しかったけど、仕方ないという諦めのほうが強かった。

「僕らも行こうか」
「スザクも先行ってて。
あたし、忘れものがあるから」
「忘れもの?
わかった。
じゃ、先に行ってるね」

残念そうに笑い、スザクはルルーシュを追うように早足で階段を下りて行った。

じき、表も静かになるだろう。

「どうしようかな、この後」

時刻から考えて、この後に始まるのはクロヴィスの追悼式だ。
仮面を運ぶタイミングとしては追悼式が中継されるその時。
全校生徒がみんなホールに集合してるから、きっと楽に仮面を運べるはずだ。

「じゃ、それまではここに隠れていよう。
そうだ、仮面も今のうちに回収しとかないと」

鉄の扉を開いて外に出れば、柔らかな風が吹き抜けていく。
目に映る空の色に、あたしは言葉を失った。

一緒だった。
トリップのキッカケになった夢を見る前に、最後に目にした空の色と。
向こうと全然変わらない色。
胸がいっぱいになり、なぜか少しだけ泣きそうになった。
確かなのは、この気持ちが悲しさじゃないってこと。





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あきゅろす。
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