2-14
帰らなければならなくなったスザクに、あたしとルルーシュは見送りで玄関へと出た。
「また来いよ。
ナナリーも喜ぶ」
「うん。
でも…」
言いにくいことを口にする前触れのように、スザクは笑顔を曇らせた。
彼の表情が『言わなければ』と意を決したような面持ちになる。
「ルルーシュ。
僕ら、学校では他人でいよう」
「なんで?!」
「どう説明するんだ?
名誉ブリタニア人と友達だって。
ヘタをすればバレてしまう。
その……君のことが」
言葉を濁したことに違和感を覚える。
そういえば、スザクはあたしがルルーシュの素性を知っていることに気づいていないんだよね。
「ナナリーもそうだろ。
これ以上、君たちに迷惑はかけられない」
ルルーシュが何を言ってもスザクは譲らないだろう。
彼の瞳は確かな意思を秘めていた。
「ルルーシュ、今日はありがとう。
楽しかったよ。
空もありがとう、これ」
スザクが持ち上げて見せたのは紙の箱。
ケーキ屋のお持ち帰り用の包みにはプリンが2つ入っていた。
セシルとロイドへのおみやげとして。
「もしロイ………じゃない、上司さんがそーいうの苦手なら、スザク代わりに食べといてね」
「大丈夫だと思うよ。
空のプリン、美味しかったから。
じゃ、また明日」
背中を向け、スザクは歩き出す。
『このまま何も言わず、見送ってもいいのだろうか』と。
あたしの中で何かが問いかけている。
もちろん、答えは決まっていた。
「スザク待っ……ふぐ!?」
スザクを呼び止めようとしたが、後ろから口を塞がれた。
足を止めて振り返ったスザクが不思議そうに首を傾げる。
「なに?」
「いや、なにもない。
また明日な、スザク」
爽やかに笑んだルルーシュは、あたしの口を塞いだままスザクを見送る。
彼の姿が見えなくなってやっと手を離した。
「――――っは!
げほ ごほ!! ちょっとルルーシュ!!
なんで止めんのよ!!」
顔を上げて。
ルルーシュを見て。
あたしは、止められたことに対する文句を飲み込んだ。
ルルーシュがすごく辛そうな顔をしていたから。
「…………ルルーシュ」
辛そうな顔をしているのはきっと、スザクの出した答えに納得してないからだろう。
「ルルーシュ。
こうしたいって思うならその通りにしなよ。
少しでも納得しなかったら、その先絶対後悔するんだから」
辛そうな顔をするのは、したくてもできないっていうもどかしさがあるからだろう。
――――よし。
「ルルーシュ、ここの女子の制服貸して。
明日、スザクに話してくる」
ただ、伝えたかった。
スザクはきっと諦めてるから。
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