2-6 連れていかれた先は屋上だった。 柵を背に腰掛ける。 涙は止まっていた。 ハンカチを目に押し当てたままなのは、赤く腫れたまぶたを隠したかったからだ。 「この際、無断で校内を徘徊していた事は咎めない。 だが、落ち着いたら俺の部屋にすぐ戻れ」 自分の意思に反してしゃっくりだけが出る。 返事をすることすらままならないあたしに、ルルーシュは呆れたような溜め息をこぼす。 「理解できないな。 なぜお前が泣く?」 解けない難問に嫌気がさすような口調でルルーシュは言った。 「スザクは人殺しじゃない。 なのにアイツら好き勝手言って…。 何も知ろうとしないくせに…! 悔しかったんだもん…!!」 知らなかった。 怒りや悔しさで涙が出るなんて。 「お前の行動でスザクの立場が悪くなるかもしれない。 そう考えることはできなかったみたいだな。 無責任だと自覚しろ」 気遣いや優しさが感じられない、刺すような冷たさを帯びた言葉だった。 だけどそれは正論で、だからこそ恥ずかしくなった。 言葉に詰まり、何も言えなくなる。 少しの沈黙。 ルルーシュが小さく息をついた。 「俺の隣にはスザクもいた。 黙れと、奴らにギアスをかけるつもりだった」 独り言のような小さな呟き。 「感謝する。 お前の言葉にスザクは救われた」 ルルーシュが歩き始める気配がして、ハンカチで目を拭って顔を上げる。 『ありがとう』じゃなくて感謝するって遠回しの言い方。 ルルーシュらしくて、あたしは彼に悪いと思いつつも小さく笑ってしまった。 [Back] [*前へ][次へ#] |