28-12 たどり着いた先には両開きの大きな扉。 扉に取り付けられた銀のプレートには『機体調整室』の名前が刻まれている。 ここだ。 扉をすり抜け、中に侵入する。 潜水艦にある部屋ではここが一番広い空間だ。 月下や無頼がズラリと並んでいて、誰かのボソボソした話し声が奥から聞こえる。 扉を開ける音でもこの空間なら響くだろう。 ディートハルトに気づかれず侵入するなら、この身体のほうが好都合だ。 並ぶナイトメアの後ろを通る。 ここが多分一番の死角だろう。 進んでいけば、姿は見えないけど何を話しているかは鮮明に聞き取れた。 「――――では、私が枢木スザクの内偵に向かえばいいんですね」 最初に聞こえたのはカレンの声。 決意を抱いたような、静かで低い声をしていた。 まるで思いつめているような。 「頼みましたよ。 あなたにしかできないんです。 ゼロのために」 含みを持たせるような意味深な言葉のように聞こえるのは、あたしがディートハルトを良く思ってないからだろうか? 気配が動き、室内を歩く靴音が複数聞こえる。 扉のほうに向かっているように思えたので、きっとここを出ようとしているのだろう。 扉が開き、閉まる音が大きく響く。 人の気配を感じなくなって、やっとあたしは死角から表に出ることが出来た。 予想通り、機体調整室には誰もいない。 「なに話してたんだろう…」 聞こえた会話で推理するなら、ディートハルトがカレンにスザクの内偵をお願いした、だよね? 単純に考えるならスザクとカレンが会うのは学園だ。 自分の中の胸騒ぎは消えない。 カレンから目を離さないほうがいいだろう。 [Back] [*前へ] |