2-5
「相手を知ろうともしないで、それなのに先入観だけでバカにして。
そんなヤツに、他人をどうこう言う資格なんてない!」
「なんだこの女!!」
あたしの言葉に激昂し、一人が拳を振り上げる。
だけどリヴァルがすかさず割って入った。
「やめろよ!
女の子に手ぇ上げるなんて最低だぜ」
拳を振り上げた姿勢のまま、奴はウッと言葉を詰まらせた。
「正論だな。
それぐらいにしておけ」
後ろから聞こえた涼しい声に、
「ルル!!」
シャーリーが歓喜の声を上げる。
全員の視線が、こちらに向かうルルーシュに集まった。
「おい、行こうぜ」
さすがに分が悪いと思ったのか、男子生徒たちは逃げるようにその場を後にする。
奴らの背中が見えなくなってから、リヴァルがお礼の気持ちを込めてルルーシュの肩をバシッと叩いた。
「いやぁ助かったぜルルーシュ!
ありがとうな!!」
「ありがとうルル、来てくれて」
シャーリーはルルーシュからあたしへと視線を移す。
「ごめんね。
怖くて言い返せなくなっちゃった。
大丈夫?」
大丈夫だと言おうとしたが声にならなくて。
代わりに視界が涙で歪んだ。
見かねたようにルルーシュが口を開く。
「彼女を保健室に連れて行く。
シャーリーとリヴァルは教室に戻って、授業に遅れることを先生に伝えてくれないか?」
リヴァルは気遣うようにあたしを一瞥し、ルルーシュに笑顔で頷いた。
「分かった。
その子を頼むぜルルーシュ」
シャーリーはあたしにハンカチを差し出してくれた。
「これ、使って。
返すのはいつでもいいから」
ハンカチを受けとってすぐ、授業開始のチャイムが鳴り始める。
「ワリ。
じゃあ俺ら、先授業行ってんな。
先生にはちゃんと言っておく。
行こうぜシャーリー!」
「え?! わ、ちょ、待ってよリヴァル!!
ごめん、私も先行ってるね!」
慌ただしい様子で廊下の向こうに消えた彼らを見届けたルルーシュは、廊下の反対方向へ顔を向けた。
「いいぞ、スザク。
もう出てきて」
その声に、廊下の曲がり角からスザクがひょっこり姿を見せた。
「ごめん。
聞くつもりはなかったんだけど…」
スザクが見せたのは気まずそうな苦笑。
何を聞いていたかは言われるまでもなかった。
「ど……して………そんな…」
ひどいこと言われて、どうしてそんな風に笑えるんだ。
やり切れなくて、涙が溢れてきた。
「っ!?
ご、ごめん!
本当に聞くつもりはなかったんだ!!」
まるで自分が泣かせたようにスザクは必死に謝ってくる。
謝る必要はないんだって言おうとしたが声にならなくて、あたしはハンカチで目を押さえて首を振った。
だけどスザクにはうまく伝わらない。
「とりあえず、落ち着くことができる場所に彼女を連れて行く。
スザクも先に授業に戻っていてくれ」
「だけどルルーシュ…」
「大丈夫だ。
また放課後にでも話せばいい」
スザクは迷ったように沈黙する。
だが、納得したようにゆっくり頷いた。
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