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「そうなんだよ、俺のクラスに来たんだって!」
二人はお喋りに夢中であたし達の視線に気づかない。
「ちょ、マジで勘弁してくれよ!
それってあの、イレヴンの枢木スザクじゃねーか!!」
ウンザリしたように吐き捨てるその言葉に相手は頷く。
「そう、あいつだよあいつ。
クロヴィス殿下を殺したって話だろ。
誤認逮捕らしいけど実際はどうだろうな?
どんなツラ下げてここ来たんだか」
明らかに馬鹿にしたような口調。
彼らのその会話には、吐き気のする嫌悪感しか抱けなかった。
シャーリーも同じ気持ちなのか、苦しげな表情をしている。
横を通り過ぎようとした彼らが、あたし達の視線に気づいてジロリと睨んだ。
「なに見てんだお前ら。
ケンカ売ってんのか?」
「ケンカなんて…。
ただ私は、そんな言い方ないんじゃないかって思っただけで…」
睨まれ、シャーリーの声は小さくなる。
それでも彼女は自分の言葉を取り消さなかった。
男子生徒の一人が嫌な笑みを浮かべてフンと鼻を鳴らす。
「イレヴン相手に言い方もなにもねぇよ。
むしろ自重しろよなあのイレヴン野郎。
名誉ブリタニア人だかなんだか知らねぇが、ズーズーしくこんなとこ来やがって」
「ホントだよな。
どうせなら先公に言っちゃう?
『人殺しと一緒に勉強なんかできません!!』って」
そして、愉快そうにゲラゲラ笑う。
麻痺したように息ができない。
動けない。
あたしの頭は真っ白で。
「取り消して」
無意識に出た言葉は、自分の声とは思えないほどすごく低かった。
「あァん?」
睨みをきかせればシャーリーみたいに怯えるとでも思っているのかこの男は。
「取り消して、って言ってんのよ。
スザクは人殺しなんかじゃない」
むしろ睨み返す勢いで、あたしは相手を真っ直ぐ見据えた。
「スザクは誰も殺してない。
どんな人か知ろうともしないくせに好き勝手に言わないでよ。
知ろうとしたら―――話したら分かるはずだよ。
他人第一で、優しくて、まっすぐだってこと。
知らないくせに勝手なこと言わないで」
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