1-7 ルルーシュが瞳にギアスを宿す。 「信じてないなら試してやろうか?」 「いや、いい。 お前が誰かを私に会わせようとするのは余程のことだ。 信じよう」 C.C.はゆっくりと体を起こす。 あたしの足は自然と彼女の元へ進んでいた。 「お前は私を頼ってここに来たのか?」 聞かれて、すぐに答えられなかった。 C.C.を頼るなんて考えがちっとも浮かばなかったからだ。 あたしの沈黙から答えを察したのか、C.C.は柔らかく微笑んだ。 「違うみたいだな。 お前も理由があるんだろう」 微笑みを見せたのはほんの一瞬。 C.C.は元のつまらなさそうな表情でルルーシュに視線を戻す。 「ルルーシュ。 お前は彼女をどうするつもりなんだ?」 「口封じをするのが一番だろうな」 キッパリと迷いなく。 ルルーシュはハッキリとそう言い切った。 「ギアスの効果がない以上、俺の素性や秘密をバラされる可能性は高い」 「そんなことしないってば!!」 「どうだか」 ルルーシュは冷たい眼差しで吐き捨てた。 彼の言う『口封じ』は簡単に想像がついて、ゾッと背筋が凍った。 ルルーシュなら本気でやりかねない。 「お前にとって不利な情報を彼女が握っている、というわけだな。 ギアスが効かないから始末するのが得策だと、そういうわけか。 だが―――」 口調も眼差しも鋭いC.Cは、まるで忠告するように呟いた。 「―――殺すことは私が許さない。 いいなルルーシュ、絶対にだ」 理解できない―――そう言いたげにルルーシュは顔をしかめた。 気にする様子もなく、C.C.は再びベッドに倒れ込む。 「私の名前はC.C.だ。 お前の名前は?」 「空だよ」 ハッと息を飲む気配が後ろから。 ルルーシュが驚きで目を見張っていた。 「お前、日本人か?」 「? うん、そうだけど」 それがどうしたの? ルルーシュの驚きにあたしはイマイチぴんとこなかった。 「………なるほど、お前名誉ブリタニア人か。 なら、持ってる住民IDを出してもらおうか」 「住民ID?」 ……て何だそりゃ? 「租界に住む者が必ず持たなければならない身分証明のことだ。 名誉ブリタニア人は常時携帯を義務付けられている」 「持ってないよ。 だってあたし、名誉ブリタニア人じゃないし」 「……なに? じゃあお前、ゲットーの人間か?」 「違うって。 あたしは…」 「どう違うんだ?」 本当のことなんて言えるわけもなく、言葉に詰まって黙り込む。 信じてくれるかどうか分からないじゃないか。 ルルーシュはあたしに対して疑いの姿勢だし。 どうしよう…! 「すでに『私』という異質な存在がここにいる。 否定はできないさ、ルルーシュは。 言えることだけでいい。 話せ、空」 C.C.の出してくれた助け船に泣きそうになる。 ルルーシュは無言の沈黙ながらも、聞いてくれる姿勢になっているのは確かだった。 感じる二人の視線と、あたしの言葉を待つ沈黙。 C.C.の助け船はあったものの、信じてもらえないんじゃ―――という不安にめまいがした。 緊張で喉が渇く。 「大丈夫だ空。 私は信じる」 C.C.の言葉があったからこそ、声に出そうと心に決めた。 「あたしね、違う世界から来たんだ」 結果。 「ハッ」 ルルーシュは、冗談は休み休み言え的に鼻で笑った。 [Back] [*前へ][次へ#] |