30-2 気づけば、闇の中に白い道が浮かぶ世界にいた。 「ここは…?」 ここは覚えがあった。 真っ白い道が果てしなくずっとずっと向こうに続いている夢。 どうしてここにいるんだろう? どうして夢なんて見ているんだろう。 腕が吹き飛び、赤黒い閃光に包まれたのに。 生きてるはずがないのに。 その考えはすぐに消えた。 死ぬはずのない身体になっていたことを思い出したからだ。 早くこの世界から抜け出たくて、あたしはすぐに歩き始める。 でもその歩みもすぐに止まった。 見えない壁が、これ以上進むのを拒んでいたからだ。 不意に思い出す。 この状況がホテルジャック事件の時と同じだってことを。 手を伸ばし、壁を押す。 まるで扉が開いたように空気が変わった。 足を踏み出し、先へ進む。 それが何を意味するかも知らないまま。 そして、足を踏み出したことで理解した。 あたしは後戻りできない道を選んだんだと。 その扉の先は、死なないと通れない道なんだということを。 [Back] [次へ#] |