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Blue lace flower
第12話



眩しい光に、薄っすらと目を開く。
暗かった室内はいつの間にかカーテンが開かれ、窓からは燦々とした太陽の光が降り注いでいた。
辺りを見回すと、広い室内にはどうやら優斗しかいないようだ。
今はいつで、何時なのかも分からず優斗は体を起こし脱がされた服を探した。
だがどこにも服が見当たらず、仕方なく体に掛けられていた柔らかな薄い布を纏いベットから降りて扉へと向かった。
扉を開こうと取っ手に手を伸ばすと、それより先に誰かによって扉が開かれた。
「どこへ行くつもりだ」
立ちふさがる大きな体を見上げ、優斗はふっと口元を緩めた。
高槻がすぐさま優斗の体を抱き上げ、眠っていたベットへと連れ戻す。
「俺の服は?」
「・・・・・・」
「高槻、帰りたいんだけど」
「・・・帰さない」
優斗をベットに押し倒し、顔を歪める高槻に溜め息を漏らし。
シャワーを浴びたのか濡れたままの黒い髪に指を通した。
「優斗・・・」
明るい太陽の光の中で見ても、高槻の整った顔立ちは少しも損なわれていない。
鋭くきつい眼差しも、通った鼻筋も浅黒い肌も、どこか漂う排他的な雰囲気さえも。
いい男だなと、そんなことを思って。
体を起こして、眉を顰める高槻の唇に口付ける。
目を瞠る高槻に苦笑し、優斗は両手を伸ばした。
「逃げない、だからそんな顔をするな」
優斗が何を言っているのか分からないといった風に、眼差しを強める高槻に再度口付けを落とし溜め息と共に同じ言葉を口にした。
「あんたからもう逃げない」
「・・・何を言っているか、分かっているのか」
「分かってる。ただ・・・俺は、あんたのものになるわけじゃない。その代わり、俺は、これから先他の誰かを好きになることはない。他の誰かに、心をやることはない。それを、あんたに約束する。だから、あんたも約束してくれ」
瞬きすら忘れて優斗を食い入るように見つめる高槻を見つめ返し、優斗は強張ったその頬に手を添えた。
その手に、どこか呆然としたまま高槻が手を重ねる。
「俺を縛らないでくれ。俺の周りに口を出すな。・・・それを約束してくれるなら、とりあえず、傍に居てやる」
「優斗・・・?」
「俺は、いつか高槻を捨てるかもしれない。何か起こったら、俺は間違いなくあんたを切り捨てる。だけど、それでも、俺の心だけは、あんたにくれてやる」
一言一言、ゆっくりと告げる優斗に、高槻は信じられないといったように息を呑む。
だが次の瞬間には優斗を引き寄せ、きつく掻き抱いた。
「優斗・・・優斗・・・好きだ」
うわ言のように繰り返し呟く高槻の背中を両手で抱きしめ返し、優斗は溜め息を漏らした。
いつか、後悔する日がくるだろう。
いつか、高槻を切り捨て逃げ出す日が来る。
だけどそれまでは、この男の傍に居てやろう。
「お前がいつか、俺から離れる時がきたら・・・俺は、お前を殺してしまう・・・。お前を手放すことは、出来ないんだ」
血を吐くように苦しげに言う高槻の背中をあやすように撫でる。
何かに耐えるように微かに震えるその背中が、愛おしかった。
全てを投げ出して高槻に溺れることが出来ない優斗のずるさも、矛盾した想いも全てを背負ってくれる高槻がたまらなく、哀しかった。
「お前が、好きだ・・・・・」
愛しさと、どこかもどかしさを湛えた眼差しを見つめながら、落とされる優しい口付けを優斗は静かに受け止めた。




終わり




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