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C a l o r
02



 どうやらこの世界の俺の名前は、"越前 リョーキ"というらしい。

 現にこの女性にそう呼ばれていたしな。

 この子の記憶によると、この女性は倫子と呼ばれる俺の母親だ。

 優しい笑みを浮かべる母さんは好きだ。

 龍だった頃の母にも似ていて、今度こそは孝行してみせる――と意気込んでいた、が。


「けほっ」


「あら、大丈夫? リョーキ」


「大丈夫だよ! 母さん」


 どうやらこの世界でも体は弱いらしい。

 母さんは、今背中に弟を背負っていながら左手に俺という状況だ。

 父さんが自由奔放すぎるせいか、母さんがこのような目に合っているのだ。


「お、倫子。すまねぇな、待たせちまって」


「ううん、気にしてないわ。あなた」


 ……どうやら母は強しというのはどこでも同じらしい。



「けほけほっ」


「ん? リョーキ、大丈夫か?」


「それがさっきから咳してるから気にはしてるんだけど、リョーキったら大丈夫の一点張りで……」


「大丈、夫、だもん」


 そうは言いつつも自分でも少しだけ、やばいかなと思っていった。


「おいリョーキ、ゆっくり呼吸してみろ」


 落ち着いて呼吸をしようとするほど、心臓が痛みを訴えてきて。

 逆に息が荒くなってしまう。


「……倫子、近くの小児科は?」


「えっと、確か……」


 父さんが近くの小児科のある病院を訪ねた。
 が、ここから徒歩で行けるような所には小児科のある病院がないのか母さんは焦っているようだった。


「だい、じょう、ぶ だよ、? そん、なに、ふた、り、とも……しんぱ、しない、で?」


 そういうと、父さんは俺を抱き上げた。


「大丈夫ってのは、本当に大丈夫な時に言うこった。そんな状態で、大丈夫って言ったって信じられねーもんだぜ」


 そう俺の背中をさすりながら言った。


「ちょっと離れてるけどあるみたい。車の方が早いわね」


「んじゃ行くか!」


 ふと気になって弟を見たら、普通に寝こけてました。




















「それでは、お大事にしてください」


 そう言われて倫子と男性は部屋から出てきた。


「はあ、まああれだ。良かったな、重くなくて」


「ええ。でも、またこういうことが起こる可能性はゼロじゃないって……」


 倫子は目にいっぱいの涙を溜めていた。

 息子を丈夫に産んでやれなかったこと、起きているとき必死に自分に迷惑を掛けまいとしていたあの子に気づいてやれなかった事への後悔でいっぱいだった。


「ああ、だけどな倫子。今は泣いてていいさ、受け止めてやるからよ」


 彼女は、静かに涙した。

 鳴き声は上げずにただ、男性の胸元で泣き続けた。

 そして夜は更けていく

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あきゅろす。
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