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C a l o r
ouverture


「はー、もう受験かー……」


「何、爺臭いこと言ってんだよ」


 はは、と笑いながら友人が突っ込みを入れてくる。


「ほら、あと五年で二〇歳だろ?」


「まあ、そうだけどさ」


「あと、五年……生きてられっかなー?」


「まーた、龍の悪いとこ出たよ……。そんなに気にしてたり病んでたりすると、治るもんも治らなくなるぞ? それに病は気からってな!」


「……それもそうだな、せめて明るく生きなきゃ損だもんな!」


「お、元気になった!」


 俺の余命は覆らない。

 現に、年々体力の低下や発作の回数が増えるなど目に見て取れるものも多くある。

 そして自分でも分かっていた、二〇歳の春は迎えられぬことも。


「そいじゃ、俺はこっちだから……」


「ああ、また明日な」


「おう、気ぃ付けて帰れよな!」


 そう言って友人とは別れた。

 俺の家は市街地に割と近いところにあるので、人通りが多く交通量も結構ある。

 なんだかんだ言って、高校受験も目の前。

 気合い入れれば、志望校にも失敗しないだろうとの事だし油断さえしなかったらいいだろう。


 とくん、とくん、とふと心臓の鼓動を感じた時には――もう遅かった。

 息苦しくなり俺は、その場に蹲りこんでしまった。

 それでも、発作が苦しくて仕方がなくて胸元の衣類をを必死に手で握りしめ、苦痛から逃げようとした。

 それでも、ドクン、ドクン! とうるさく鳴り続け痛みは増すばかり。

 段々と、息を吸うのさえできなくなってきていた。


 霞む視界と朦朧する意識の中で、ふと聞こえてきたのは勢いを増す車の音。

 嘘だろと思った瞬間、霞む視界が真っ白なライトに照らされた。




 その後の事は意識がプツリと切れて、意識として残っているのはそこまでだった。

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