短編集 8 アリファエルが、部屋に入ると、既に帰っていたフィラムが、側へとやって来た。 「お帰りなさい」 「あぁ…」 「あれ?…」 「なんだ?」 「アリー。何だか、機嫌悪い?」 すると、首を傾げて、そう聞いてくるフィラムに、アリファエルは、不機嫌さを隠さずに言った。 「当たり前だ。フィラム、君は父にだけ贈り物をする気なのか?」 「えっ?…」 「どうなんだ?」 抱きしめながら、顔を覗き込むアリファエルに、フィラムは、小さく笑う。 「コラ、何を笑っている?」 「だって、勿論。アリーにもあるよ?」 「なら、早く出せ」 「出せって…もぉ」 アリファエルの腕の中から、抜け出すと、フィラムは、机の上に置いてある包みを手に取った。 「はい。もう少しで、アリーの誕生日でしょ?当日だと、忙しくなると思って」 「開けていいか?」 「うん…」 渡された包みの中には、薔薇と白百合の刺繍が縫われた手袋とハンカチが入っていた。 「まさか…最近、朝早くから、出て行っていたのは……」 「そうだよ。これ、作ってたの…」 「ありがとう。フィラム…」 何度も、交わされるキス。 こうして、アリファエルの不満の元は無くなり、二人の幸せな時間は、続いてゆく…。 二人の間に、新な幸せが運ばれる日も近いだろう。 [*前へ] [戻る] |