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短編集
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フィラムは、ある物を作れる為に、どうしてもアリファエルに知られずに作れる場所がほしかった。


だが、皇太子であるアリファエルに知られずに、作れる場所は、限られている。

そこで、フィラムは皇帝に頼んだ。


勿論、可愛いフィラムの頼みを無下にする訳もない皇帝は、アリファエルとて、安々とは入り込めない場所。

つまりは、自分の離宮をフィラムに、貸したのだ。


例え、アリファエルがフィラムを追ってきたとしても、皇帝の離宮には皇太子でも、許可なく立ち入る事は許されない。

許可を求めた所で今回、皇帝はアリファエルに許可を出さない。


その為、フィラムは好きなだけ、制作に専念できた。




「なんとか、今日中に完成しそうです」
「そうか…良かったな」
「それで、これ…お父様に、差し上げます」
「ほぉ…私にも、くれるのか?」
「はい。たいしたものではありませんが、お父様が場所を貸してくれなかったら、作れませんでした。そのお礼です」


フィラムが、皇帝に贈ったのは、一輪の薔薇の刺繍が入った白いハンカチ。

「有り難く受け取ろう」
「良かった」
「では、そろそろ君を解放せねばな…早く、完成させて、あれを喜ばせてやってくれ」
「はい。失礼します」

足早に、退室したフィラム。

残された皇帝は、贈られたそれを手に、眦を下げて、本当に嬉しそうな表情を浮かべていた。




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あきゅろす。
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