短編集
1
ガメーイル帝国皇太子アリファエル。
彼は最近、ある一つの不満を抱えていた。
起きてすぐ、手を伸ばしても側に温もりがないのを確認すると、アリファエルは溜息を付いた。
「またか……」
ここ最近、フィラムはアリファエルが起きるよりも早く起き、ある場所へと行ってしまう。
アリファエルは、それを面白くないと、感じていた。
何故なら、朝起きて、フィラムを自分の腕に抱き込む幸せが壊されているからだ。
こうなるまでは元々、フィラムは朝に弱く、アリファエルが起きた時点ではまだ、寝ている事が多かった。
そして、アリファエルにとっては、その時間は至福の時間だった。
目を覚ますと、目の前には、今だ眠ったままのフィラム。
無防備過ぎる安心しきったその寝顔に、アリファエルは笑みがこぼれ、フィラムを抱き寄せると、その顔へと、キスの雨を降らす。
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