短編集
5
気丈に振る舞う幼子。
しかし、そんなアリファエルの姿を見る度に、皇帝は痛ましいと感じ、自分の不甲斐なさを痛感した。
幼いアリファエルが感じている不安や恐れ。
それを痛いほどに感じ、理解していたのは、皇帝だけだった。
大国ガーメイルの偉大なる皇帝。
しかし、彼の半生は、決して、幸せなものではなかった。
彼は、愛なき両親の下に生まれた。
それだけなら、どこにでもある話。
皇族として、権力を持つ者として、政略結婚は普通の事。
だが、皇帝の場合は、少し違っていた。
息子を疎む父と息子に関心のない母。
不遇の皇子。
そう陰口を言われてきた。
そして、幼い頃から大人達の醜聞を目の当たりにして生き、人生に疲れていた。
フィアやバイスといった気心の知れた人間達と出会えなかったら、今の皇帝は、存在していなかったろう。
だからこそ、最近の皇帝はアリファエルにも、友をと感じるようになっていた。
だが、友というものは、用意されて出来るものではないと、皇帝は知っていた。
それに、あの皇妃の事もある。
到底、国内では、アリファエルの友は見つけられないだろ。
そこで、皇帝はある事を思った。
国外ならば、皇妃も簡単には、手を出しにくい筈だと。
そして、国外の中でも、治安が安定しており、気候も安定しているリーフへの訪問が決定した。
勿論、決まったからといって、すぐに訪問した訳ではなく、それの決定から一年後。
アリファエルは、リーフへと旅立って行った。
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