短編集
3
母は余程、その絵の事が気に入らないのだろう。
会う度に、その絵の事を幾度も、口にした。
そして、だからだろうか?。
いつしか、アリファエルの中で、その絵への興味が増していた。
だが、この時のアリファエルは、知る由もなかった。
自分という存在が、本当は、どういう存在かという事を。
どれ程、危うい均衡の上に立っているかという事を。
まだ知らなかった……。
この時のアリファエルは漠然とした不安を身の内に抱えていた。
もはや、自分の事を母が、‘道具’としてしか、見ていないと分かっている。
母が自分に対して、愛情など、一欠けらも抱いてはいないと理解している。
将来的に、自分という‘道具’を思い通りに動かしたいから、あれやこれやと、口を出してきているのだと、そんな事は分かっている。
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