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短編集
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その日も、母は繰り言を叫んでいた。


それを適当に聞き流していたアリファエルだったが、母が漏らしたある言葉が耳に、残った。


「…忌ま忌ましい…あの絵!!焼き払えるものなら、すぐにでも焼き払ってやるのに!…」


それまでの意味の成さない繰り言とは、違う響きを持った言葉。



母が口にする内容は、常に父の事だけ。


なれば、絵とは父に関連する何か。


それも、母が普段よりも、更に取り乱すほどの何か。



幼いアリファエルから見ても、両親の仲は破綻していると分かっていた。



母は一方的に、父を愛し、父に執着していた。

そんな母の想いを知りながら、父は母を密かに疎んでいた。




いつからか、二人の間には、埋めがたいが溝が出来上がっていた。


母は、自分が父から疎んじられていると重々承知の上で、それでも尚、父への想いを捨てられない。


愛に狂った女。


それが母の姿。





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