短編集
1
愛を知らなかった子供。
愛を受けて尚、孤独だった子供。
これは……。
そんな二人が出会うより少し前の話。
絶え間無く、ヒステリックに繰り言を叫ぶ母。
そんな母に、アリファエルは、うんざりとしていた。
少し前までは、自分に無関心だったハズ。
なのに、急に口煩くなったきて、正直に言うと、鬱陶しいし、煩わしい。
それに、アリファエルは、母が付ける匂いのキツイ香水やら、焚きしめる香やらも、好きではなかったし、身を華美に飾り立てるその様も、あまり好きではなかった。
一様、それなりの美貌の持ち主である為、華美な装いが似合わない。
なんて、事はない。
でも、この人には、まったく自分が母親だという意識がないのだろうと、アリファエルは呆れるばかり。
この人が、自分を抱きしめてくれた事なんて、一度も無い。
聞いた話では、自身の体のラインが崩れるのを厭うて、赤子だった自分に、一度として母乳を与えなかったという。
母性。
母は、それを何処かに、捨てた人。
この人の根底にあるのは、もはや妄執だけだと、アリファエルは思った。
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