[携帯モード] [URL送信]

小説「宵闇の皇子様と明星の皇子様」
4
そして、その傷は、憂いを生んだ。






この国の民達は、子供が居る側室達よりも、皇妃であるマリエッタの方が、発言力も、権力も上だと理解している。


それ故に、このまま皇妃に子供が生まれず、皇帝に何かあれば皇妃の力が、他の者より強いという事実の前に、三人の皇子の母親達は皇妃マリエッタに気に入られようと、我が子を世継ぎにする為、動くだろう。

そうなれば、先々代の時よりも、更に酷い事態が待っていると、年寄り達は危惧した。


そうならない為に、強い力を持つ皇妃に、世継ぎを産んでもらいたいと、強く願う。



「マーフィル。お前もまた、民と同じ懸念を抱いたか…?」
「恐れながら、その通りにございます」


(やはり…避けては通れんか…)


ガイゼルとて、同じ懸念をしなかった訳ではない。



ただ子供という事に関しては、自分が、どうこう考えても、どうにもならない事柄であると、ガイゼルは痛感していた。









ガイゼルは、かつてマリエッタへ子供を欲しいかと、聞いた事があった。

だが、彼女は不思議そうに。
「あら、あなたは、私に産めというの?」
そう首を傾げた。


マリエッタの中には、権力を維持する為に、子供を産むという選択肢は初めから存在しなかった。




[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!