小説「宵闇の皇子様と明星の皇子様」
ウルリカの場合
タイラントへの出発を明日に控えた夜、ウルリカは自室にて、ジークフリードの事を考えていた。
皇太子ジークフリードの事はカウザーにも、様々な噂として届いていた。
民から絶大なる支持を得ている皇妃の産んだ世継ぎであり、幼い頃から帝王学を学び、皇妃に似て聡明な皇子だと。
そんな噂がある一方で、別の意見もあった。
皇妃の産んだ皇子とはいえ、ジークフリードは第四皇子。
上には腹違いの三人の兄達が居る。
側室から産まれたが、兄は兄。
長子を皇位継承権第一にするべきという意見もあった。
だが、先帝の例もあることから、そんな意見は少数派。
それ以外の多くはジークフリードが皇太子となり、後に皇帝になる事を望んだ。
将来、ジークフリードが率いる事になるだろう国に、希望を抱く者達も少なくない。
人々が期待するだけの実力も、ジークフリードにはある。
ウルリカは、そんな将来有望なジークフリードの正室となる。
果たして、自分に皇太子妃が務まるだろうか?と自問自答していた。
男装の麗人と呼ばれ、男の様に生きてきた。
そんな自分が人々から、期待される皇太子の正室。
それに自分と同時期に側室となる三人の姫の事も、気がかりではある。
正室となる以上、ウルリカは側室となる彼女達を押さえねばならない。
万が一にも、正室が側室に頭を下げるなんて事はあってはならない。
皇太子妃として、ウルリカは彼女達の上に立たねばならない。
輿入れを明日に控えた今、ウルリカは覚悟を決めねばならない。
ウルリカは、まだ何故、皇太子妃に自分が望まれているか分からないでいた。
だが、はっきりしている事がある。
ウルリカは、タイラントという大国の皇太子に、妻にと望まれて嫁ぐのだ。
ならば、正室として、側室をコントロールする事は責務といえる。
今、分かるのはそれだけ。
だが、それは覚悟がなくては出来ない。
「私は、何があっても、彼女達の上に立つ」
その為に、側室達と戦う事も、あるだろう。
だが、それに対する恐れはない。
あるのは覚悟だけ。
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