小説「宵闇の皇子様と明星の皇子様」
三者三様
父親から、側室の話を聞いた三人の姫達。
マリアンヌの場合。
「父上。タイラントの皇太子は、どんな方なのですか?その方は、私の夫に相応しい方なのですよね?また私の侍女達を全員連れて行く事は可能ですか?」
言外に、男装をしたままでも良いと言う男なのか?また侍女=マリアンヌのハーレムに侍る女達を連れていけるかと含ませて、マリアンヌは言った。
そんな娘に、父王は、頭を抱えながら答えた。
「タイラントの皇太子ジークフリード殿は、度量の広い方だと言われている。妻となる女の趣味や趣向など大目に見る筈だ。故に、通常よるも多く侍女を連れていく事も許されるだろう」
その言葉に、言質を得たとばかりに、満面の笑みを浮かべて、マリアンヌは言った。
「ならば、私に異存はありません。タイラントに側室として参ります」
それだけを言うや、マリアンヌは、出発の準備の為に退室した。
後に残された父王は、溜め息を吐き出し。
「あんな娘だが、マリエッタの息子ならば、手綱を握れる筈だ。孫の顔も案外、早く見れるかもしれんな」
と、呟いた。
因みに、この父王は、マリエッタの兄に当たる。
エリシアの場合。
「お父様。費用とかどうなりますの?私、豪華な衣装なんて、着ませんわよ」
そんな娘に、父王はげんなりしながら、答える。
「費用の事なら、心配はいらん。国費から、費用は出る。それに、最低限しか準備させておらん」
すると、渋々といった態度で、エリシアは言う。
「お父様。それなら、私もタイラントへ参りますわ。タイラントの皇太子様は、立派な方だと聞いていますもの」
この娘には、格式やら伝統を持ち出した所で、無駄であると、父王は理解していた。
故に、一国の姫が嫁ぐにしては、簡素な準備しかしていない。
派手にすればするだけ、この娘は機嫌が悪くなる。
体面など、取り繕うだけ無駄なのだ。
メリルの場合。
「父上。タイラントに行ったら、もう武器には触れなくなるのでしょうか?私、それが心配で夜も寝れないのです」
心配する事が違うだろうと、呆れる父王だったが、答えた。
「安心しなさい。あちらは、お前の趣味に理解を示してくれるだろう…多分な…」
若干、言葉を濁す父王。
そんな父王の態度に、メリルは不思議そうな顔をした。
「父上?どうされました?」
「あっ、いや、何でもないぞ。さぁ、出発に向けて、準備をしなさい」
「えっ?あっ、はい」
部屋を出ていく、娘の背中を見ながら、父王は思っていた。
武器を偏愛する娘。
あちらで、変人だと陰口を叩かれやしないかと、それだけが心配な父王であった。
まさに、三者三様の姫達。
その言動、態度、それは他者を圧倒するカリスマ性を併せ持ったモノとなっている。
マリアンヌの人を引き付ける魅力。
エリシアの人を先導する弁舌。
メリルの人を引き込む行動。
これらをジークフリードが制御できるなら、彼は偉大な人物に成れるだろう。
三人の姫達との邂逅まで後少し。
歴史が始まる。
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