小説「宵闇の皇子様と明星の皇子様」
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だが、それは貴族が発言した場合であり、マーフィルの様な立身出世をして、のし上がる相手に、彼等、貴族は容赦しない。
ここぞとばかりに、吊るし上げて、あわよくば潰してしまえと、考える。
しかし、彼等は忘れていた。
「お前達、見苦し真似をするな」
ガイゼルの前であった事を。
実力主義のガイゼルは、生まれだけに、こだわる無能な者が、心底嫌いである。
故に、今の状況はガイゼルの苛立ちを掻き立てる。
「サンテス。控えろ、お前は皆を煽り過ぎる」
その言葉に、サンテスは。
「はっ…申し訳ございません」
と、言って引き下がった
しかし、ガイゼルは冷ややかな視線をサンテスへ向けたまま、マーフィルの名を口にした。
「そなたは、マーフィル…ウィンだったか?」
「はい。マーフィル・ジルバル・ウィンでございます」
「では、マーフィル。お前に聞くが、民は何故、皇妃の子を望む?世継ぎならば、三人の皇子から適任者を選べば良いだけだろう」
その当然の疑問に、マーフィルは、静かに答えた。
「民の中でも、強く皇妃様に御子をと、そう望むのは、先々代の陛下の時代から生きる年寄り達でごさいます。彼等は先の陛下が、陛下と正式に決まるまで、国内外で繰り返された血生臭い争い事を今でも、鮮明に覚えています」
その瞬間、ガイゼルはマーフィルが言わんとする意味を理解した。
ガイゼルの父であり、先帝でもあるトーガは、側室から生まれた第三皇子であり、本来なら皇位を継げる立場ではなかった。
しかし、先々皇妃には子供が居なかった。
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