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小説「宵闇の皇子様と明星の皇子様」
2
この父は、男装の麗人であったウルリカをどこか、疎んでいる。


凛々しい娘よりも、少し我が儘だが、器量良しの娘達の方が可愛いのだろう。



幼い時から、我慢を重ねてきたウルリカは、それをしょうがない事と諦めていた。

今更、男装を止めたからと、可愛らしい女にはなれないのだから。


そんな事よりも、今は事の真意を聞く方が先である。



「父上。あの話は本当なのですか?私がタイラントの皇太子に、望まれているという話は…」


すると、みなまで言わさず、父は答えた。


「本当だ。お前よりも、年の近いエルレシアかアリスをと返答したが、お前でなければならぬと、返事がきた」


ウルリカは、ここでも、あからさまな贔屓をする父に、ため息が出そうになる。


だが、父も言ったが、ウルリカは自分よりも、エルレシアやアリスの方が皇太子には相応しいと思えた。



しかし、現実はそうはいかず、自分に話が来る。


何故、なのだろうか?。

そんな疑問を思わず、ウルリカは口にした。



すると、父は言った。


「あの皇太子は、何かをお前に見いだしたのだろうよ。だから、エルレシアやアリスでは駄目なのだろ」

ウルリカは、すぐさま聞く。



「皇太子が私に、何を見いだしたというのですか?」


すると、父はその問いに。

「多分、あの皇太子は…」

と、言った後、言葉を止めた。


「父上?どうなさったのですか?」
「…何でもない。とりあえず、お前は選ばれたのだ。早く、自室に戻り、出立の準備をしろ」

言うや、ウルリカは執務室から出されてしまった。



色々と考える事はあるが、父に言われたとおりに、ウルリカは、まずは準備だと、気持ちを切り替える事にした。







だから、執務室に居る父が。


「あの皇子の求めるものを得るには、年若いエルレシアやアリスでは駄目だ。ウルリカでなくば、決して叶うまい…難儀な事よ」

と、言ったのをウルリカは知らない。




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